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ワンダーFULL TOKACHI File.19  幻の秘湯『さわと』

さわとっぷ

さわと温泉 (上士幌町・糠平湖)

 

『寒い 寒い』と言いながら、どこかこの寒さを楽しんでいる。 それが『北海道に暮らす』ということです。

それにしてもこの冬は、全国的にも降雪量が多いようで、毎日が雪かき。場合によっては幹線道が雪で塞がり孤立してしまう地域などTVのニュースでは雪害に悩まされる人たちの様子が映されていました。

過ぎたるは及ばざるごとし… 多すぎるのは困りますが、少なすぎても困るのが『雪』。

十勝は北海道内各地にくらべ、冬の天気が安定しやすいので、雪が積もったといっても数日もすると路面はきれいに乾いてくる。そのかわり厳しいのが朝の冷え込み。

寒い季節、食卓には鍋料理が頻繁に登場します。
このところ凝っているのが『ミルフィーユ鍋』。白菜と豚バラ肉を重ねて重ねて鍋にぎっしり詰め込んで煮る。あれですw

専用の鍋スープも市販されていますし、あれこれ具材をたくさんそろえる必要もないうえ、家族にウケが良いのでおすすめ。

冬のもうひとつの楽しみが『温泉』。
もちろん年中行きますが、冬の露天風呂はいっそう身体にじんわり効くように思います。雪景色の中で湯気がもうもうと立ちのぼる景観もまた格別。これも凝り出して、出掛ける先々の温泉をチェックするようになると、ちょっとした『温泉マニア』なのです。

十勝管内の温泉は、泉質もたいへん豊かで、浴室の眺めにも志向をこらし、温欲(?)をくすぐるお風呂がたくさんある。

だから「ここが私の一番!」と決めるのは、かなり難しい。

この温泉、旅館やホテル、保養施設等に利用されるものとは別に泉源はあるものの利用されていない、もしくは利用された過去はあるが現在は使われていない。ところによっては昔から自噴して流れるままにされている湯も多い。

『野湯』とと呼ばれる温泉湯場。そのひとつが、『さわと温泉』。それも1年の限られた時期だけに現れる『幻の秘湯』です。

さわと温泉は、上士幌町の電源ダムによる人造湖『糠平湖』にある。 糠平といえば『幻の橋タウシュベツ川橋梁』が最も有名です。この橋はダム湖の水が増えることにより湖水に沈み、減水期の冬に氷の下から徐々に姿を現す光景が人々を魅了する旧国鉄士幌線のダム建設以前まで使用されていた旧線アーチ橋。

タウシュベツパノラマ

この橋と同じように湖水に沈み、減水期にふたたび湯煙を立ち上らせる温泉が『さわと』なのです。

さわと』と名付けられた野湯ですが、その源泉は古い時代よりアイヌの人々に知られていました。

この源泉の脇を流れる川が、ぺンケユウンナイ川

ぺンケ=下流、川下
=温泉
ウン=~にある
ナイ=川
下流に温泉のある川』といった意味です。

パンケユウンナイ川

※アイヌ語の「川」には「ベツ」と「ナイ」と呼ぶ2種類があり、「ベツ」は水かさが増すとすぐに氾濫してしまう危険な川を指し、「ナイ」は岸がわりとしっかりしており、洪水にも強い川を現わしています。
つまり、地名に「ベツ」という音が当てられている地域の川は、洪水の危険をはらんでいるという意味があることになります。
※同じように、アイヌの言葉の「水」にも「ワッカ」と「ベ」という2種類があり、「ワッカ」は飲める水、「ベ」は飲めない水を指しています。例えば「ワッカナイ」という地名は“川の水を飲んでも大丈夫な上、洪水の恐れもなく川縁で暮らしても安全”という意味がある。

 

温泉の始まり

大正2年(1913)、長沢元治氏がこの川縁の源泉を利用して長沢温泉(資料により「ペンケユウンナイ温泉」との記述もあり)を開業。
開業当初から、その経営は他人に任せていました。この頃は、十勝監獄(帯広外役所→十勝分監→十勝監獄)の囚人の労役によって音更山道(現在の国道273号線となる元の道)が大正7年に開削される以前であり、利用する客は造林業関係者のみで経営は思わしくなかったようです。
大正9年(1920)に入り、創業者の長沢氏は、この宿を自ら経営することになりました。

当時の詳細な経営記録はありませんが、帯広保健所の鉱泉試掘台帳によると大正14年(1925)に「長沢温泉旅館」の名は残されている。
62℃と60℃の2か所の湧出口を持つナトリウムアルカリ泉で、縦横9尺(およそ2.7m四方)深さ2尺5寸(およそ75cm)の砂湯であったらしい。

※砂湯(砂風呂)は、温泉の湧出する砂浜などで全身を砂中に埋めて蒸し温める方法で、浴衣に着替え利用する。砂浴の温度は砂の掘り下げぐあいによって調節が可能で、1回の砂浴は10~15分が適当とされる。 泉質はアルカリ性食塩泉が主で胃腸病・神経痛・婦人病・冷え症・リウマチ等に効用があるという。
※一方、島隆美氏による糠平温泉の発見は大正8年(1919)で、同年に泉質調査後、浴用施設開業の許可が下りたた。しかし音更山道が完成していたものの、資材搬送など施設建設に支障をきたすほどの奥地であったことから大正13年(1923)にようやく現在の「湯元館」の前身が開業しました。
しかし、交通の利便性はあいかわらず悪く、本格的に浴用の利用客が来るようになったのは大正14年(1925)以降(国鉄士幌線の前身)だった。

長沢温泉

長沢元治氏の直接経営にも関わらず営業は思わしくない。しかしこの経営は、長沢氏が軍人恩給を受けるかたわらで、のんびり余生を送る暮らしの意味合いが強く、旅館に収入を託すほどの執着は、さほどなかった様子です。

長沢氏は福岡県出身、日露戦争時には憲兵曹長であり、主に密偵(スパイ活動)として活動。

日露戦争後、音更村役場で代書の仕事をしていました。(そのころ『長沢温泉』は業務委託により開業していた)

大正9年、ユキ夫人と温泉宿を自ら仕切るため、山深いペンケユウンナイに入りました。
ユキ夫人は、熊本県出身で東京の女学校を出ており、付近で作業する造材業者たちから「姐さん」として慕われていたそうです。
「姐さん」と呼ばれたのは、単に旅館の女将ということだけではなく、男勝り逸話があった。

音更村からいきなり人の少ない大雪山系の奥地の温泉まで来たのですが、暇さえあれば、鉄砲を背負って山鳥やキツネ・ヒグマを追って歩き、一人で野宿するという気性の強い女性であった。

十勝開拓の初期、まだ未知の原始林へ開拓に入る人々の中には、噂に事欠かない大物も多かった。その中でユキ夫人は女性ということもあり、その存在は特に抜きんでいたものと思われます。

この長沢温泉も、やがて歴史に幕を降ろす事になります。

 

そして幻に…

昭和15年(1940)、この旅館を鹿追村の熊谷ナヲ氏が買い取り、『熊谷温泉』として再開。
ところが昭和27年(1952)、この温泉旅館は糠平電源ダムの建設事業によって湖に沈む地域に含まれることからやむなく廃業に至ります。以後、ダムの完成と貯水により、温泉旅館跡はタウシュベツ川橋梁と共に糠平湖へ没してしまいました。

そのまま人々から忘れられる存在でしたが、糠平湖の特殊な性質によって限られた季節に『幻』は再びひっそりに現れるようになります。それも毎年のように…。

糠平湖は戦後の日本復興、北海道の電源のため開発されました。(現在主に道東域)

堰きとめられた音更川は十勝川水系の一級河川。音更は、アイヌ語の「オト プケ」(毛髪が生ずる)に由来する。これには「川の流れが乱れた髪の毛のようだ」という解釈もあり、沢水や支流を集めるこの川は水量も多く、古き時代の造林作業では、森林資源搬送に川を使った『流送』が行われていた。

その豊富な水は発電の源とするため、上流域の取水ダムで流量制限され、導水管により、その多くが足寄や本別の発電所まで送られるため、音更川の下流は静かな流れとなりました。

糠平ダムより上流域の谷間は人造湖『糠平湖』となって、電源だけではなく山間に新たな景観を作り観光地としても脚光を浴びるようになります。

天然湖の赴きを呈した人造湖にはヤマベやワカサギが放流され、冬はワカサギ釣りで賑わう。ニジマス、コイ、ウグイ、ブラウントラウト、ハナカジカ、オショロコマも生息している。

テント村

この糠平湖、貯水量が常に一定というわけではなく、発電用途の他、雪解け水や雨量による調整、冬季の河川流量の減少で大きく水位が変わることから、当初遊覧船も定期運行されていましたが、現在はありません。

もしかすると遊覧船の窓からタウシュベツ川橋梁をのぞむ…ということもあったかもしれませんね。

 

2015年の「さわと」を訪ねる

糠平湖上

水位が特に下がる冬季間。

糠平湖は厚い氷で覆われ、五の沢から降りるとたくさんのワカサギ釣りの人たちのテントが並び、ちょっとしたテント村の様相です。

そのテント村の間を抜けて真っすぐ反対岸へ向かう。

湖の上に岬のように張り出した高台のひとつの裏側にその場所があることは知っていましたが、どれがそれに当るのかがよくわからない。(真冬だから近くまで行けば湯気が昇るのが見えると思っていたw)

湧出口から湯溜まりまで対岸がハッキリ見えるけれど岸までは、なかなか近づかない。ずーと同じ景色が続くような気がして改めて糠平湖の大きさを知りました。かれこれ40分近くかかっていたかもしれない。

ワカサギ釣りのテント村がいつの間にか砂粒のように小さく見えた頃に河口らしきところを発見。運よく『さわと』を発見。

岩石を並べて作った湯船はとても浅く、泥が沈殿している。たぶん脚を伸ばして入ったとしても腰から下がせいぜのようでした。

秘湯等関連の書籍によると『湧出料は豊富』とのことですが、この湯船に注ぎ込む流れはとても細い。

お湯は、ほとんど無臭ながら、ときおり流れの中でポコポコとガスが湧き上がり、かすかに硫黄臭がします。

このもとめどなく流れ続ける様を見ていると大自然の不思議さを感じずにいられません。

手を入れてみると 『熱い!』  たぶん家風呂だと熱めなほうの温度でしっかりした温泉です。

 

『さわと』の名は、熊谷温泉(長沢)跡を訪ねた秘湯愛好家たちが名付けたそうです。

この『さわと温泉』、一時は幻の温泉として全国に有名になった過去もあり、その当時の載る本では浴槽も設置され、誘引ホースや洗い場、脱衣所も設置されてタウシュベツ川橋梁と同様に多くの人々が訪れました。

 

しかし、現在その設備は全て撤去されました。

秘湯愛好者などのブログでも高頻度で登場するので人気が下降したわけでもないのに…

そこには事情がありました。

それが『自然公園法』。 この行為は、よもすると懲罰に値することになりかねなかったのです。

 

自然公園の保護と利用

自然公園の指定地域では、開発を全面的に禁止してはいない。国有地、公有地のほか、民有地も含まれるため、農業や林業、その他の産業活動を行なうことも一定の条件下で許容している。

自然公園では、地域の自然環境の実情に応じて、どのような保護や利用を行うか計画するため、「公園計画」を策定している。この公園計画では、保護や利用などについて、以下のような地区を設定し、管理を行っている。

特別地域

糠平湖方向を望む公園の風致を維持するための地域。用途に応じて、第一種から第三種まで区別がある。以下の行為には、許可が必要となる。

工作物の新築・改築、樹木の伐採、鉱物の採取、河川・湖沼の取水・排水、広告の掲示、土地の埋立・開墾、動植物の捕獲・採取、本来の生息地でない動物の放鳥獣、本来の生育地でない植物の植栽、施設の塗装色彩の変更、指定区域内への立入、指定区域内での車の使用など

第一種特別地域

特別保護地区に準ずる景観を有し、特別地域のうちでは風致を維持する必要性が最も高い地域であって、現在の景観を極力保護することが必要な地域

第二種特別地域

特に農林漁業活動については努めて調整を図ることが必要な地域

第三種特別地域

特に通常の農林漁業活動については原則として風致の維持に影響を及ぼすおそれが少ない地域

特別保護地区

特別地域の内、特に重要な地区。以下の行為には、許可が必要となる。

特別地域で許可を要する行為、樹木の損傷、動物の放鳥獣(家畜の放牧を含む)、植物の植栽・播種、物の集積・貯蔵、たき火

海域公園地区

海域の景観を維持するための地区。1970年(昭和45年)の改正で、「海中公園地区」として設定された。以下の行為には、許可が必要となる。

工作物の新築・改築、鉱物の採取、広告の掲示、動植物の採取、埋立・干拓、海底の形状の変更、物の繋留、排水、環境大臣が指定する区域・期間内の動力船の使用

普通地域

特別地域や海域公園地区に指定されていない自然公園の地域。以下の行為には、届出が必要となる。

工作物の新築・改築、特別地域の河川・湖沼へ影響を及ぼすこと、広告の掲示、水面の埋立・干拓、鉱物の掘採、土地や海底の形状の変更

 

以上のように比較的緩やかに述べられているものの届出をせず許可を受けることなくこのような行為に及ぶことは(保護法を知る知らないにかかわらず)処罰の対象になることも考えなければなりません。

実際にこの自然保護法(旧国立公園法も含む)に抵触し、現場の原状回復(改変前の状態に戻す)を命じられた例が十勝管内にもいくつかあるのです。これにはこっそりゴミを捨てる行為も含まれることでしょう。(※場合により罰金.懲役の罰則を科せられることもある)

なおかつ糠平湖は電源会社の私有地です。湖が年間通してレジャースポットとなるのも電源会社の好意と受け取らなければなりません。

 

古の湯を楽しむことが、すなわち法に触れるということではないのでしょうが、せいぜいビニールシートを敷き、近くの石などで押さえて仮の湯として、事後は元通りにすることが秘湯愛好者にふさわしいことだと思います。

 

それでも気持ちに留めておきたい。

秘湯愛好家は、自分たちだけのためにこの湯を見つけたわけではなく、たくさんの人たちと分かち合いたかったのだということを…

 

林道側から

 

 

それでも手だけじゃ温泉欲が満たされませんので、糠平の湯へ入って行きましょう。

 

 ペンション 森のふくろう

糠平温泉ホテル

山の旅籠 山湖荘

東大雪ぬかびらユースホステル

他にも自然味豊かな温泉あり。

糠平の湯は源泉100%かけながしw

 

 

参考:上士幌町史(昭和45年巻)
   北海道無料温泉100秘湯(表正彦:著)
   音更川の流送(上士幌町地域の宝探しの会編)
ウィキペディア: 糠平湖 糠平ダム 音更川 の項

 


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