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ワンダーFULL TOKACHI File.13 「幻の森」

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糠平湖(上士幌町•ぬかびら源泉郷)

 

潮が引いたように減水期がピークに達した湖の景色は砂丘のような景色が広がっていた。
周囲を囲む山々が衣替えしたように緑が色濃くなる景色の中でそこだけが不毛地帯のように赤茶けた土の色を晒している。
こんな景色の中なのにここを訪れる人は多い。そして人々は異質な地平線に目を凝らす。
その視線の先にあるのが、あの有名な「幻の橋」タウシュベツ川橋梁(1937年:130m)。
「北海道遺産」にも制定されたこのアーチ橋は、旧国鉄士幌線(帯広─十勝三股間)の路線の一部で糠平駅から幌加駅の区間に架かっていました。。
『幻の橋』と呼ばれる所以は、この湖が冬から6月頃まで減水し、そこからから再び増水を始め、例年8月頃になると湖に完全に没し、次の冬期の減水期に厚い湖の氷が減水に伴って沈下。湖に沈んでいた橋は氷を突き破るようにして再び現れる様子からそう呼ばれました。

タウシュベツ01

でも、ダムの水がふえて水浸しになる橋は渡れないじゃないか…。

それはそうです。実は、この橋が現役だった頃は、ここに湖などなかったのですから。
その証拠に橋の周り、そして湖畔のいたるところに砂浜に散らばる小さな生き物のような群れ。
これがアーチ橋とと共に「幻の…」と呼ばれてもよい、かつての『森』だったのです。

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糠平湖

「減水期」と言っても、この湖の減水は渇水によるものとは違います。
上士幌町北部、大雪国立公園内のぬかびら源泉郷の目前に広がる糠平湖は、十勝川水系音更川上流域と、一帯の沢水を溜めることにより形成された人造の湖。

ダムの構築により山間を流れる音更川は、総貯水量193,900,000 m³、湛水面積822 haの湖に姿を変えました。
糠平ダム(1956年)は、発電専用のダムで北海道東部の重要な電力源です。 道内で第3位の湛水面積と第4位の貯水量の重力式コンクリートダム(※)。十勝川水系トップの湛水面積と貯水量を持つ。その高さは北海道内で第3位(76m)。
ここから導水管を通し糠平発電所へ誘引して発電。使われた川水は下流の元小屋ダムでいったん溜められ、再び導水管を通して足寄町の美里別川流域の芽登第一発電所へ送られる。
通過後、またさらに芽第二発電所を通り、利別川の足寄発電所へ、そして最後は本別発電所へ送られます。
こうして糠平の水は、川をまたぎ5つの発電所で電気を起こしている驚くほど働く川だったのです。
歴史を遡ると明治の頃より音更川は、上流域の豊富な森林資源を下流域に流送する際に利用され、音更川の各所には、網場(あば)と呼ばれた川水をせき止めて水流とともに材木を押し流すための堤が作られた場所や陸上げ場が設けられ多くの流送人夫が活躍し、この運搬法が鉄道に変わるまで続けられていました。

糠平ダム

※主にコンクリートを主要材料とし、ダムの自体の重さで水圧に耐えるのが特徴。膨大なコンクリートが必要で、アーチ式ダムほど施行条件は厳しくないものの堅固岩盤のあるな地点でないと建設する事が難しい。海外では古くから建設されているが、高さ200mを超えるダムはあまり多くない。世界最大の重力式コンクリートダムはスイスのグランド・ディクセンスダム(285m)で、他にはインドのスリサラーダム(241m)などがある。日本国内では新潟•福島県の只見川の奥只見ダム(157m)が最も高い重力式コンクリートダム。ちなみに札内川上流の札内ダムも重力式コンクリートダムで高さは114m。

 

湖の誕生

 この発電用ダムを管理する糠平湖電源株式会社は、昭和27(1951)年9月、日本経済の自立を目指して産業振興に重要な役割を果たす電力の開発を使命として設立。
その背景には、この時代の戦後復興の波に沿わない極度の電力不足でした。昭和23(1947~1948)年頃からの日本国内および北海道内の電力の需要は極端に窮屈となり、使用制限や停電に見舞われることも少なくありませんでした。
さらに昭和25(1950)年6月、朝鮮動乱によって国内の産業活動が活発化するようになってから、この電気不足はいよいよ深刻になり、経済の発展をはばむ重ほどの大な問題となりました。
電源開発株式会社は設立後、調査審議会を経て事業の開発目標としての基本計画とともに十勝川の糠平、北川上の胆沢、猿ヵ石十津川の西吉野、天竜川の吉野・秋葉、それに球麿川、石狩川などが相次いで電源ダムの設置が決定公表されていきます。

taushbetsu02

十勝川水系の糠平電源開発計画は、北海道電力により昭和21(1946)年から26(1951)年にわたって770万円の調査費をかけ計画がなされましたが、大規模の貯水築堤を作るための多額の資金が必要なため着工には至りませんでした。
そこで北海道開発庁が北海道の電力増強の見地から昭和27(1953)年に国費約800円、北海道費約500万円を投入して調査し、地元上士幌町、帯広市、十勝町村会、知事などが一丸となり国に陳情を重ねた結果、同年9月29日、第3回開発調整審議会において発電所着工が決定しました。電源開発株式会社は12月22日から現地調査に入り、翌年(1953)から本格的に着工が開始。
水面下にはまだかつての森が この施設は産業開発に欠かすことのできない電力の供給源であり、加えて上士幌村(昭和29年より町制施行)が施設から得る固定資産税は地元財政を飛躍的に発展させるものとなりました。
当時の上士幌町(村)は、地元に鉄道が敷設されてから急激に人口が増加したように発電所の建設のピークである昭和30(1955)年は人口13,000人を突破し、経済はどんどん活発化していきます。
国勢調査における人口動態は、昭和25(1950)年の8,762人に対し、昭和30年(1955)年には13,608人とダム着工により5,000人近い人口の増加があったことになります。
ダム及び、ダム湖の完成は電力だけではなく観光資源としても多いに注目され十勝の観光拠点として活躍します。
湖畔には温泉街だけではなく、スキー場、キャンプ場などが作られ、夏は釣り人やウインドサーフィンのブームで多いに賑わう時代もありました。
1965(昭和40)年には、糠平温泉観光開発株式会社が発足し、遊覧船ぬかびら丸(49トン)が就航し、貸ボート41隻を備える。しかし人造湖で発電、放水により水位が変化するため運営に困難があり遊覧船はほどなく廃航されました。

この工事により国鉄士幌線の一部が湖に沈むこととなり、路線の一部を付け替えました。この変更によってダム湖の影響を受けないいくつかのアーチ橋が山の中に放置されることになり(当初は撤去される予定であった)、湖に沈むことになった旧糠平駅も現在のぬかびら源泉郷付近へ移転。タウシュベツ川橋梁は湖に姿を消す運命になります。

そのまま忘れられる運命でしたが、水の増減で消失・出現を繰り返す橋の様子が話題となり注目を集めるようになりました。
特に春の減水ピーク前の鏡のような湖面に半円のアーチが姿を映して丸い窓のような形に見える姿が発表されてから、ここを訪れるプロ・アマのカメラマンも多くなり、廃線跡探訪ブームによる愛好者やロマンチックな風景に心奪われる観光者も年々増加しました。

糠平ダム02

そして2001年、アーチ橋は北海道遺産の第1回選定分として公表されました。※この登録は、『旧国鉄士幌線コンクリートアーチ橋梁群』としてのものであり、『タウシュベツ川橋梁』だけを指しているものではありません。
現在のタウシュベツ川橋梁は、橋へ至るタウシュベツ林道を通行する車両の事故があり、今後も事故が予想されることから林道のゲートは終日閉鎖されています。
林道ゲートを通るための鍵は、申請受付と貸し出しを行っていますが事前手続と簡単な講習なども必要なため、上士幌町観光協会などの主催する許可取得のガイド付きツアーのご利用がお勧めです。(ぬかびら源泉郷のホテル・旅館のフロントでも承り可)

通行許可申請先:十勝西部森林管理署 東大雪支署 河東郡士幌町字上士幌東3線231 ☎01564-2-2141

『北海道遺産 旧国鉄士幌線 アーチ橋見学ツアー』 
4月16日~10月下旬予定(タウシュベツ川橋梁見学は糠平湖水没まで)
予約・問い合わせ:東大雪自然ガイドセンター ☎01564-4-2261   e-mail:shizen@netbeet.ne.jp

五の沢橋梁

橋の近くまで行くことはできませんが、都市間バスの停留所がある『五の沢』より三国峠方向へ少し上ったところに『タウシュベツ展望台』へ続く遊歩道があり、対岸に幻の橋をのぞむことができます。
※停留所「五の沢」付近、タウシュベツ展望台入口付近は駐車場が設けられていますが、車上荒らしの被害もあることから車両のロックと貴重品の管理には十分にご注意ください。

 

根は幹ほどにものを言う

旅の目標を「幻の橋」から「幻の森」へ変えてみました。
湖畔の景色に点在する「森」の名残が妙に気になっていたので…
五の沢橋梁脇から湖畔へ降りて遠浅に見えた景色へ歩いて向かう。でも、遠くから望んでいた景色は、そこへ行ってみると決して平坦な地形ではなく、沢水を束ねて音更川を作った渓谷の形そのままなので、起伏がとても激しい。

小さな支流の跡

砂丘のように見えていたところは1年の大半が水の中ということもあり、たっぷり水を吸い込んだ泥が履いていた長靴の底に幾重にもまとわりついてくる。当然地表もヌルヌルしているわけで、しかもアップダウンが激しい。さほどの距離を歩いたわけでもないのに息切れして、時々休みながら歩を進める。真冬に歩いた平らな氷の下にこんな深い起伏があったかと思うと足がすくみます。糠平湖の底は、いったいどこなのだろう…
奇妙な景色のあちこちで異形の生き物(切り株)があたりの様子を伺ったり、エサを探したり、戯れているなど、それぞれのポーズで短い地上の暮らしを楽しんでいる。そばまで来て見た切り株の多くがそこそこの大木で、「あのチマチマしてた切り株が?」と驚かされます。

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以前、大樹町の「よろづ展示の小屋」の館長さんが石の他にも、多くの木の根や木のコブを集めていて「木の根やコブの表情豊かな姿が面白い」とおっしゃっていましたが、それが解るような気がしました。

寡黙な群れはただ静かに森と山の記憶、そして自然のユーモラスな場面も見せながら、やがて橋とともに湖の下で静かに眠りにつきます。

そして新しい目覚めに厚い氷の傘をかぶって「キノコ氷」などとも呼ばれながら姿を現してきます。
見方によっては、ここは現代彫刻の並ぶ「幻の美術館」と呼んでみても良いのではないかと思います。

それにしては順路が起伏が富みすぎて過酷なんですけどね。

石を集めている

火星の親子

湖畔を歩き回る怪物

ダムの満水時は全てが水の中.

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※湖畔探訪は融雪水や沢水の流入もあり、泥状になっている箇所も多いので普通の靴ではなく長靴が必要です。来た道も見失うことがないように。
また、付近はヒグマの生息域です。クマよけ鈴を携行(ぬかびら源泉郷の鉄道資料館でも取扱しています)し、なるべく単独は避けること。そしてゴミは持ち帰るようにご協力ください。ちなみに私はマイ熊よけ鈴を3つ携行。自分がうるさくてたまらない程になる(´・ω・) 大変だねーっ(´(ェ)`)

これなんだろう?

撮って良いのは写真だけ  残していいのは足跡と思い出だけ

上士幌町のとんとんスポット

黒曜石の世界 「平成の縄文人」を名乗る店長さんは十勝石(黒曜石)に惚れ込んでいます。太古の生活(石器)はもちろん黒曜石の断面に宇宙すら見出す。この創作性が単なる工芸品ではなくアートな作品に目を奪われます。

鉄道資料館 ぬかびら源泉郷にある資料館。旧国鉄士幌線ゆかりの品々とアーチ橋梁群の往年の勇姿を語る貴重な資料がマニアを唸らせます。

山の旅籠 山湖荘 自慢の洞窟風呂が圧巻! TVで見る旅番組のような雰囲気の囲炉裏料理が旅を満足させてくれます。

糠平温泉ホテル 地場産の山の幸をふんだんに使った料理。ぬかびらの湯は、どこも100%源泉かけ流しw

ペンション森のふくろう 襟裳直送の海の幸も楽しむことができます。お風呂は岩盤浴等に用いられるブラックシリカ含有石で作られています。

Bistro ふうか 温泉街のおしゃれなレストラン。湖畔散策後のランチに最適です( ´∀`)

東大雪ぬかびらユースホステル 旅の演出のアイデアが秀逸。肌で感じる東大雪を体験してみませんか?

栗林石油(株) 帯広支店 上士幌SS ぬかびら源泉郷には今のところGSがありません。三国峠越えの際はご注意。

東大雪博物館 リアルなジオラマと世界の昆虫類の標本がヽ〔゚Д゚〕丿スゴイ!

第2音更川橋梁

第3音更川橋梁(1936年 長さ71m)
鱒見トンネル付近の泉翆峡にかかる最も古いアーチ橋梁で、この橋梁の成功が一帯のアーチ橋梁の魁となる。

鉄筋コンクリートのアーチ橋では北海道一の弧を描く(32m)アーチにタウシュベツ川橋梁につぐファンが多い。

上士幌町の登録有形文化財。

 


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