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ワンダー FULL TOKACHI file.2  山の上のピラ・リ

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 file2 山の上のピラ・リ

 

「あの変なものはなんだろう…?」

帯広市の隣町、幕別町を釧路方向へ走る国道38号線の途上。本町を通り過ぎた頃に山(高台)の際にへばりつく赤みがかったものが見えます。
国道から少し離れているので運転中は気付きにくいのですが、グネグネして生物的なフォルムの…失礼ながら一言で言うと“変”なもの。(=´ω`)ノ

horl幕別本町近郊にある「明野ヶ丘公園」は、幕別発祥で全国に広まったパークゴルフのコースや木製のアスレチック遊具の充実し、市街地方向へ傾斜する斜面にスキー場を併設する林間公園です。
平成8(1996)年、町は開基100年の記念事業のひとつとして旧展望広場に展望施設を兼ねたモニュメントを設置することを決めました。
この不思議な造形は、特定の作家(芸術家)がデザインした物ではなく、幕別町住民が参加して創造したものであることは、あまり知られていないのかもしれません。
名は「ピラ・リ」 奇妙なフォルムから、数多のホームページやブログ等で「珍物件」「珍建築物」として紹介されているので、現地へ赴くことは無くてもご覧になったことがある方は多いのではないでしょうか?
町の事業にしては、その自由奔放さに違和感を感じることが否めませんが、その意図を探ってみようと思います。

町のことは町の図書館へ行けば解るょぅ(=´ω`)ノ とばかりに赴いて、カウンターで「ピラ・リのことを調べているのですが…」と伺い、案内された郷土資料の棚にはギッシリ並ぶ「ピラリ」の背文字!
これはスゴイ!(/;°ロ°)/ 

1冊手に取って開いてみると『幕別町児童文学集(児童文集)』…名前だけか、目的と違うじゃないかorz
ともかく、この辺りを探せば何か解るだろう…と町史や郷土史の重たい蔵書を順に見ていきました。
うーん…でも観光パンフやHP以上のことはあまり文献として出てこないなぁ…
それじゃぁ!─ということで町広報誌の保存版。
「ピラ・リ」が誕生する1年前にターイムスリップ(=´ω`)ノ

 

piraribackワークショップによる町民参加の夢づくり・絵づくり・ものづくり

幕別町民参加による施設づくりを目指し、小・中・高生から大人まで参加したワークショップを5回開催しました。 この中で、自由な意見を出し合いながら、夢を語り、シンボル施設の基本になる絵づくりを進め、実施計画をまとめました。 建設にあたっても、町民の皆さんに壁面や柱にタイルなどを張るなど仕上げに参加してもらう、ものづくりワークショップを開催します。

towerin“ピラ”と“大地の目”をイメージ

施設は、ふたつのイメージを持ちます。ひとつはアイヌ語で「ヤムワッカ・ピラ(清らかな水の湧き出る崖)」と呼ばれていたことから開基百年を契機に幕別の新たなシンボルとなる“崖”を造るというもの。 もうひとつは「幕別の未来を見つめる大地の目」。この目は明野の山頂から幕別の町やそこに住んでいる人たちがいつまでも幸せであることを見つめ、見守り続けていくといった歴史と未来をテーマとしてイメージ化しています。

tiltshift長さ約50mの半円形状、夜はライトアップ

建設現場は公園の先端西側で、現在の展望広場を中心に長さ約50m、高さ約5m、奥行き約5mの半円形状のもので、何本もの柱からなっています。施設の中からも、屋上からもゆっくりくつろぎながら、市街地が一望でき、大パノラマを楽しめます。夜はライトアップで国道からもよく見えます。構造は鉄筋コンクリートで型枠のない網によるコンクリート流しを使い、表面は自然に近い形で造ります。

広報「まくべつ」平成7(1995)年10月号:№525 での公表より(一部略)

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「ピラ・リ」は、幕別の町を見おろす明野ケ丘公園に「展望できる施設」あるいは「公園の顔となるような施設」などを設置すべきでないかといった要望があったことから、幕別町の開基100年記念事業の一環として建設に取り組み、平成8年10月に完成しました。

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tainaiその設計は、約50人の町民が参加する「ワークショップ」という方法で行なわれました。
この方法は、広く住民の声を聞き、一緒に計画を進め、住民の考えをうまく計画に反映させていこうとするもので、この方法に詳しい音更町万年に本社のある「高野ランドスケープ・プランニング」に基本計画および設計を委託し、そこで作られたいくつかの原案を基に、参加された町民の皆さんは自由に意見や施設に託す夢を語り、基本となる絵づくりを進め、平成6年12月の第1回の開催から2年間、通算5回のワークショップを行なって、現在の形に決定。

room02「ピラ・リ」は、アイヌ語で「偉大な崖」を意味します。これは、幕別市街の旧名・止若がアイヌの人々に「ヤムワッカ・ピラ」(清らかな水の湧き出る崖)と呼ばれていたことに由来していて、その名の示すとおり、施設の形状は「崖」をモチーフとしています。

また、「ピラ・リ」にはもう1つ、「未来を見つめる大地の眼」というイメージがあります。これは、「ピラ・リ」に、明野の山頂から幕別の町やそこに住む人たちの幸せを見守り続けてほしいとの願いが込められています。なお、同施設には地上から8メートルの高さを持つ展望塔も設置されていて、幕別市街や広い農地、日高や大雪の山並みの大パノラマを楽しむことができます。

(幕別町HPでの紹介文より)

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「ピラ・リ」命名に関しては、意味の公表・解説はあるものの、命名の経緯は、幕別町図書館で資料的(ワークショップの報告書)なものを探してみました現在未確認です。
元々ある土地の呼名、「ヤムワッカ・ピラ」は、ヤム(冷たい)、ワッカ(湧き水:飲用できるもの)、そして、ピラ(崖)と和訳資料によっては「冷たい水の湧く崖」と、解釈が異なってくる。
しかし、『冷たい水=清らかな水』と考えれば“清らかな水の湧き出る崖”の訳は、決して間違いではないのだと思います。
ちなみに“ヤム・ワッカ”は、道北の稚内の語源「ヤム・ワッカ・ナイ(冷たい水の湧く沢)」と同じですね。

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ところで「ピラ・リ」の名付けの意味を調べてみると少々疑問がわいてきます。
それぞれの言葉の解釈をまとめると以下のように説明されています。

ピラ[pira]崖(諸説によると、日本語で「崖」と呼ばないような低いものも含む。「地盤が脆い・崩れやすい場所」という解釈もある)
[ri] ①高い ②(山菜などが)伸びている ③動物の皮を剥ぐ、むく ④鯨肉

「偉大なる崖」の意味を持つ“ピラ・リ”なのですが、この「“リ”=“偉大”」に準じる和訳がなかなか出てこない…。
①の「高い」を「崇高」→『偉大』とすれば適切な語であるけれど、方や「動物の皮をはぐ」という言葉を持ってくるのだろうか…?
そんな疑問を感じながら、このピラ・リを見上げていると皮をむいた肉に見えてきた…(; ̄_ ̄)
この疑問に関しては今後調べることにして(詳しい方がいたら教えてください)

感の良い方はお気づきかもしれませんが、なぜ「ピラ・リ」であって、「リ・ピラ」ではないのだろう?
地名の「ピラ」は、みんな後に付くのに…(。・ω・)

近頃の施設系の建物には音感のあるカワイイ名前がつけられる例が多いので、「ピラ・リ」もアイヌ語を元に音感的に表現したのだと思われます。 

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町民の想いを結集で完成した「ピラ・リ」。何度見ても不思議な造形ですが、広報誌でスケッチ画が公表された時は現在とずいぶん違う形でした。塔もなければ、柱も直線状の形で完成後の生物的な印象は全くというほどない…。
子どもたちも含めたワークショップの協議と工事で日を追うごとに進化し続けていた…そんな気がします。
この完成も多くの町民参加のタイル張りが行われ、外観以上に胎内(?)も不思議な空気感が誕生しました。
それにしてもずいぶんとまた奇妙な形になったものだなぁ…

その疑問に関して設計に携わった高野ランドスケーププランニングのHPで「ピラ・リ」に関する解説を発見。
明野ヶ丘に誕生した「ピラ・リ」の本当の意図が少し解った気がしました。

幕別町明野ヶ丘公園・開基100年シンボル施設「ピラリ」

reaf幕別の町を見おろす丘の上に開基100年を記念したシンボルを造りたいという話を受けました。町では、地域の活性化を併せて図っていきたいということで、住民参加による計画を進めることとなりました。
価値観が多様化している現在、町民みんなが、シンボルと思えるものを模索するのは、大変な作業でした。開基100年をどう捉えるのか?また未来に向けてどのようなメッセージを持たせるのか? この計画においての重要な課題に対して、ワークショップは回を重ねるごとに難しくなっていきました。
数案の模型を提示することにより参加者の意向を整理し、設計者なりの案としてまとめました。丘の上は、そのままでも十分に気持ちの良いところですが、町に暮らす人々が、生活の節目節目に町を見おろして気持ちを新たにするような場所になればとの思いと、環境をコントロールしてきた開拓の歴史と自然を持つ柔らかな形の表現が出来ればと考えました。 丘そのものが、展望台になるように、また、丘をなるべく傷つけないようにこのような形態としました。
mozaic十勝の光は強くてまっすぐだ。ここでは、柔らかな色合いの変化を感じてもらえるように北向きの展開となった。
トラスウォール工法による自由曲線の施工は、工事業者の人々の多大なる協力なしにはあり得なかったでしょう。
“ピラ・リ”と言う名称は、幕別(旧称:ヤムワッカ)がヤムワッカピラという崖から清らかな清水のわくところの語源にちなんでつけたものです。
四季の移り変わりや、朝日夕陽に彩りを増し毎日町を見おろす丘の上にいる、そんなシンボルになればと思います。  ここは眺望する場所で、施設そのものは、そこからの景観の枠組みであったり、よりドラマチックな景観のシークエンスを味わうための補助的なものです。
大地と空の間を行き来する様な動線を計画しそこにあるものをもっとよく見てみようというきっかけになればと考えました。
風を感じ、光を感じ大地の豊かさを感じる事ができるような場所、それは、これまでの開拓の歴史を振り返り、それ以前の十勝の自然、あるいは、これからの自然との関わりを考えさせるような場所となればと思います。
直線的に構成された、十勝の農村風景のなかで、異質な物となれば成功だと思います。

(設計/高野ランドスケーププランニングHP 「ピラ・リ」の項より)

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「道の駅」で北海道を車で旅行している方と話をしたときに北海道、特に十勝の印象をこう話していました。

「十勝はホント広くてスゴイと思うけどね。どこまで走っても同じ景色が続くと飽きてくるね」

dish …(。・ω・) うーん…そういうところもあるかもしれないね。 でも素直に「そうですよね」とは言えない…
じゃあ何が足りないんだろう 何がプラスされれば良いのだろう…。
きっと起伏が少ないことと遠くまで見渡せるところに“同じ景色の連続”を感じてしまうのかもしれない。
十勝を知っていれば、それが全ての景色ではないと知っているけれどね。

きっと旅も景色も音楽のようにリズムが、料理のようにアクセントが必要なのですね。
美しい音色も・濃厚な味も、単調に続けば飽きられてしまう…。
景色に添えるアクセントは、景勝地であったり、あるいは「道の駅」や地域の町おこしといったことなのでしょうが、それを造ることや守ることは地区行政独自の仕事ではなく、町民の参加と来訪者の利用が不可欠なのです。

「ピラ・リ」に持たせた“未来を見つめる目”は施設内のモザイク画が、その象徴と思われますが、本当の丘の目は、この展望台に立つ人々の“目”なのだと思います。

所在地:北海道中川郡幕別町字明野 明野ヶ丘公園内
発注者:幕別町
監理者:幕別町建設部都市計画課
施工者:藤原・堂前・丸朋共同体 代表藤原工業株式会社
設計・施工期間:平成8年4月~8年10月
事業費:1億7,000万

<利用案内>

○営業時間:なし(但し、午後9:30園内消灯)
○定休日:なし
○入場料:なし

 

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